養護学校職員辞職から改めて見る、介護業界の深刻な闇

養護学校職員辞職から改めて見る、介護業界の深刻な闇

養護学校職員、辞職を考える

何が起きたのか

2015年もあっという間に上半期が終了を迎え、下半期へと突入しようとしています。時間の流れがあまりに諸行無常過ぎてしまい、お願いだから時間少しだけ遡ってくださいと思わなくもない頃ですが、夏は夏で来るのが楽しみなので素直に受け止めておこう。2015年上半期も色々あった、そのどれもがセンセーショナルなものばかりとなっているが、その中でも一番衝撃的だったのは先日5月下旬に発生した出来事だ。鳥取県の養護学校で職員が待遇不慮の為されない現場での仕事はこれ以上出来ないとして全職員が辞職するという事件が発生する。養護学校に我が子を預けている人にとっては人事ではない話といえるでしょう、職員として雇用されていた人が全員辞職するなどという話が自分の周りで起きたら、などと考えたら恐ろしい話と言っても差し支えないだろう。

介護の業界ではその実態があまりに杜撰な側面が存在し、重労働でありながらもそれに見合った正当な対価を獲得することが出来ないとして嘆かれている人も多いと思います。こうした悩みに直面している人たちにすれば共感したくなる話かもしれません、けれど職員全員がいなくなるなどと想像できるものではない。今まで我が子を安心して預け、決して不遇と思わせること無く教育が受けられる環境を作っていた親たちにすれば、不安を感じるニュースとなった。

この養護学校で何が起きたのか、これまで報じられてきた内容を元にして考察してみよう。

人手不足による重労働

仕事を行う上では1人の人間がこなせる業務量には、どうしても個人差が出てきてしまいます。なんでも出来る事に越したことはありません、ですがオールマイティに仕事ができるからといって円滑に作業進行を進められるというわけではない。作業ペースを一定に、質を落とさずスピーディーに行っていくとなったら個人の裁量次第となる。そのため全員に同じだけの技量を求めるのはどうしても無理なのだ、強制的に強要されても穴だらけで他のスタッフに迷惑を被ってしまいがちになることも度々ある。どの業界で働いていても思うのだが、大半の仕事内容は把握しているものの、専門的に特化した内容の業務をこなす機会が誰しも多いはず。そういう人たちにとってはそのまま専門分野に特化した業務で安定した仕事をしていければいいが、臨機応変が求められる場面も度々ある。

鳥取の養護学校で起きた介護職員が全員辞職を決意する経緯となったのは、こうした背景が絡んでいる。要するに、人手不足であることは学校側が承認しているにも関わらず、在職している人間だけでフル対応しなければならない状況まで追い詰められていた点だ。介護の現場においても人手不足は嘆かれているが、人手が足りない現実はどこの会社でも共通しているだろう。しかして中々満足のいくレベルと技量を兼ね備えた人材が見つからなければ、企業や団体としても採用に積極的な姿勢は見せない。今の御時世では技量不足だと感じられれば、アルバイトでさえ見つけるのも一苦労な時代だ。

辞職を決めた職員達は仕事ができる現場を捨ててまで守りたかったのは、自分自身だったのだろう。今話したように人手不足が問題だったのではないかと言われているが、学校には全生徒76人在籍している中で、医療ケアが求められる生徒が33人いた。この騒ぎで辞職を決意した非常勤職員6人、単純に考えても6人で33人を担当する、つまり一人頭5.5人分の作業を請けなければならない。それがどれだけの重労働なのかは語るまでもないでしょう。医療ケアのデリケートさや神経を常に研ぎ澄ませていなければならない環境によるストレスなど、緩和しなければならない点が沢山存在していた。

賃金面も少なからず

このニュースが出てきた時、おの一番で出てきた原因と考えられたのは個人としては『賃金の問題』があったのでは考えた。蓋を開けてみれば人手不足という、切実過ぎる問題であり、話を聞いた時にはここぞとばかりに共感を覚えた人もいるだろう。人がいない時は、在職している人間で何とか回さなくてはならない。例えそれが繁忙期であろうと循環させるためには毎日同じ人間が出勤して、同じ業務をバカの一つ覚えのように繰り返していく。こういう時は時間があっという間に過ぎるものだが、結果論で考えるとあまり実のっていないためやり甲斐が見いだせなくなる人も少なくないだろう。

ところがだ、介護ないし福祉業界において問題の争点となりやすい賃金面ではさほど騒がれていないが、非常勤という点を考えるとあまり実情は安定していなかったと分析できる。少し話は逸れるが、教育現場において常勤講師として働くことの出来ない、非常勤講師の存在が問題となっているといったニュースも報道された。この人達の場合、当然非常勤がために毎月安定した生活を送れるだけの実入りがあるわけではない。そのため、アルバイトなどをして生計をやりくりしているという話も出ている点を考えると、今回の養護学校の非常勤職員として働いていた人々も例外ではないと考えるのが妥当だ。

常勤と非常勤という垣根を考えると、今回の騒動を生み出した職員たちによる不満が募ってのことと分析できる。

学校側の対応

労働量と賃金面、この2つの天秤は常に安定している職場など正直何処にもないと言っても過言ではないでしょう。そんな職場が日本全国に普及すればある意味ハッピーになるのかもしれませんが、実現はカスミのようにつかむのは難しいだろう。一部の企業ではそれこそ安定しているかもしれないが、安定していない職場では改善が求められると訴えている現場も多い。賃金については微妙なところだが、とにもかくにも人手不足の解消は早急に脱して欲しいのが本音なところ。ただ人件費という問題についても考えなくてはならないため、管理職として働いている人たちはその辺の折り合いについてもよく考える必要がある。

今回の事件において、雇用主となっている養護学校側は賃金というより1人の従業員が請けている労働量を軽減するために対策を練らなければならなかった。しかし実際には効果的な対策を実行すること無く、宙ぶらりんとしたままで放置していたと言っても過言ではない。事実、明らかな人手不足に補充しなければならない現実を知っていながらも行動に移さなかった点については、素直に認めているという。人件費で頭を悩ませている職場も多いだろうが、今回の事例では重労働を課している点を重々承知していながら、非常勤職員たちが働きやすい職場を作らなかった学校側に非があると見ていいだろう。ひいては今回の騒動によって、医療ケアを必要とする生徒数名が登校できなくなる事態に追い込まれてしまったため、問題の種は何も従業員側ばかりではない。

1人は戻ってきたが

学校側が人手不足を認識していながら現状維持を継続し、非常勤職員を酷使し続けたがために全員辞職を決意するまで追い込まれ、さらには養護学校の運営にも多大な影響を及ぼした。その後、辞職した6人の内1人は退職を撤回して職場復帰しているが、それでも人手不足である事実に変わりはない。かといって養護学校の運営を休止させるわけにもいかないため、特例として実際に医療の現場で働いている看護師を3人派遣して対応するなどの窮策を取る。現在では人手を募集していると言われていますが、こうしたネガティブな報道がされたあとの職場で勤めたいかと言われるとかなり微妙なところだろう。

今回の問題は介護業界としての側面における人手不足という問題、それによって生じやすくなっている現場改善を雇用主が積極的に取り組んでいないという点が挙がっている。どの現場でそうだが、人手がいない事実は中々払拭できるものではないため歯がゆいものだ。